汚れつちまつた悲しみに
今日も小雪の降りかかる
汚れつちまつた悲しみに
今日も風さへ吹きすぎる
汚れつちまつた悲しみは
たとへば狐の皮裘(かはごろも)
汚れつちまつた悲しみは
小雪のかかつてちぢこまる
汚れつちまつた悲しみは
なにのぞむなくねがふなく
汚れつちまつた悲しみは
倦怠のうちに死を夢む
汚れつちまつた悲しみに
いたいたしくも怖気づき
汚れつちまつた悲しみに
なすところなく日は暮れる・・・
(中原中也山羊の歌より)
私が高校生の頃、この詩を国語で習ったが、当時は、この詩の良さが全く分からなかった。
しかし、歳を重ねた今、読むと、中也は、天才だと思えるくらい素晴らしいものだと感じている。
私の記憶が正しければ、中也は、齢30歳の若さで結核により他界している。
30の若さで、これだけ洗練された詩が作れたこと、さらに、若さに似つかわしくない世界を見事に詩っていること、驚嘆に値する。
中也は、生きているうちは、さほど評価されず、後程に評価された点は、気の毒に感じる。出来れば、中也に、君の詩は、後世で、教科書に載るくらい高い評価を得たと教えてあげたいと私は思った。